■休刊の理由
「リニューアルした結果、それでも部数の回復が見えてこなかったら休刊」
7月号で大きくリニューアルを行ったピチレモン。そこから9月号までの3ヶ月、学研の"エラい人"たちは、待ってくれました。
で、運命の9月1日。リニューアル後の3冊の販売が終了し、それらの部数実績などを総合的に見て、休刊の決断が下されたということになります。
■全ての責任は編集部
これに対し、読者の一部から「編集部がかわいそう」「編集部はヤル気だったのに」といった声が上がっています。
実際、編集に関して何の関与もできない「現役ピチモがかわいそう」、入ったばかりの「新ピチモがかわいそう」、楽しみに毎月読んでいる「ピチ読がかわいそう」というのなら分かります。
ですがなぜ、編集部までが「かわいそう」なのか。今日の三月の転校生では、休刊の直接の原因といえるリニューアル失敗につき、なぜダメだったのか、その理由と編集部の責任について考えます。
■失敗1)オトナ路線の失敗
リニューアル最初の号のキャッチコピーは「3歳オトナに」。過去のピチレから、一歩「オトナ路線」へ進める宣言です。
でも、ちょっと待ってください。この路線は、ホントに正しかったのでしょうか。なぜあえて、ここでオトナ路線に舵(かじ)を切る必要があったのか。
以下、ピチレのリニューアル時点における、小学生雑誌、中学生雑誌、高校生雑誌それぞれの立ち位置を図示して確認します。
■ファッション雑誌の対象層
■最も競争のはげしい分野
これまでピチレは、上の図の真ん中、点線の囲い部分の位置にあるとおり、中学生雑誌として売ってきました。現状におけるライバル誌はニコラ1誌のみ。
それを、あえてリニューアルによって、1コ上の分類である高校生雑誌への参入を試(こころ)みるわけです。
しかし、これが無謀なのは、ちょっとファッション誌を知っている人なら、すぐに分かること。そこには、ニコラよりさらに多くの部数を誇(ほこ)る「セブンティーン」&「ポップティーン」の2強が控えているのです。
■ニコラの対立軸
であるからこそ、これまでの歴代ピチレ編集部は、中学生雑誌として踏(ふ)みとどまり、なんとか部数を回復しようと努力してきたわけです。
ようするに、中途半端にリニューアルして、上の世代の雑誌に片足を突っ込むより、ニコラに満足しない読者の受け皿として、あくまでも中学生雑誌としてピチレの独自色を発揮させる方面でのリニューアルこそ、必要だったのです。
■失敗2)サイズアップの失敗
さらに、より大きな判断ミスといえるのが、本誌のサイズを大きくしたことです。具体的には、ニコラやニコプチ、キラピチといった定番の「A4サイズ」を改め、一回り大きく、セブンティーン他、大人の女性誌のサイズに改めたとです。
これこそが、大失敗といえます。なぜかといえば、本屋さんやコンビニ、スーパーなどなど、本の売り場において、ピチレが並べられる位置が変わってしまったのです。
■本屋さんで並ぶ位置
本来であれば、ピチレは、ニコラやニコプチなどA4型の小中学生雑誌として、同じ場所に並んで売られるべきです。
ところが今回、同世代向けの雑誌より、一回り大きくなった上、さらにはタイトルも「カタカナ」から「英字」に、表紙も大人っぽくなったことで、多くのお店では、お姉さん雑誌として扱われるようになりました。これは、完全アウト。
■リニュの目的
そもそも、ピチレのリニューアルの最大の目的は、ピチレ卒業世代の読者、具体的にはセブンティーンやポップティーンの現在の読者を、ぶんどって来ることではありません。
なにより優先されるのは、ピチ読の卒業延期だったはずです。「そろそろピチレを卒業して、セブンティイーンを読もう」という人たちを思いとどまらせるためのリニューアルだったはずです。
これに加え、オトナっぽさに憧れる、ニコプチをはじめとする小学生雑誌の卒業世代の新規読者獲得だったはずです。
■ウラ目ウラ目
そんなわけで、特に後者の観点からいえば、本屋さんにおいてピチレが、ニコプチやキラピチの読者の目に触れやすい、同じ位置に並んでいることが大事だったのです。
ところが、リニューアルによるサイズアップの結果、数あるお姉さん雑誌の中に埋もれてしまう結果になってしまいました。
なお、お姉さん雑誌の読者にしてみれば、いくらセブンティーンやポップティーンと一緒にピチレが並んでいたとしても、いまさらピチレに戻ってくる理由がありません。
こうして、今回のリニューアルの一環として行われた本誌のサイズアップは、全く意味の無いどころか、むしろ悪い結果しか引き起こさなかったことになります。
■失敗3)ロゴを英字にしたことで
「ピチレモン」から「Pichile」へ。一見すると新鮮、カッコイイと思えないこともないリニューアルですが、良く考えると、29年と2ヶ月の長きにわたり使ってきた伝統あるロゴ。
それを投げ捨てて、新しくするわけですので、一般に定着するまで、ある程度の時間がかかるのは当然です。
その上、現にピチ読であるなら、次号予告にて事前にリニューアルを知った上で、本屋さんに買いに行くからいいものの、問題は新しい読者さんと、久々にピチレを買う読者さん。
いざ、ピチレを買おうと思い立っても、店頭で見つからない。並ぶ位置も違う、ロゴも違うでは、「あれっ!?ピチレモンがない!」といった事態が起こることも十分に予想でき、せっかくの読者獲得の機会を、みすみす逃すことにつながったといえます。
■失敗すべくして失敗した
以上見てきたように、オトナ路線、サイズアップ、新しいロゴといった一連のリニューアルは、いずれも甚(はなは)だしい見当違いであり、どう考えても、部数アップは望めなかったところ。
ピチレを、中学生雑誌の現状を、たいして良く知らない外部から来た編集長が、話題づくりのためだけにテキトーにいじった、その程度のものだったといえそうです。
よって、「リニューアルしても部数は伸びず休刊」という流れは、ある意味当然の結果。ピチレは失敗すべくして失敗した。休刊すべくして休刊したのではないでしょうか。
■第2回予告
とはいえ、学研上層部もそれはそれ。去年の11月、編集体制を一新し、外部に編集を任せた時点で、2015年中の休刊を前提としつつ、「万が一、部数が大幅に回復するようならば続刊もアリ」といった姿勢であったように思います。
ということで、来週更新予定の次回の休刊ドキュメント(第2回)は、すでに2014年の時点で翌年の休刊は決まっていたのかを検証する「ピチレ休刊は既定(きてい)路線だったのか?」となります。
⇒関連日記:リニューアルと休刊の法則
⇒関連日記:リニューアルの真相
⇒関連日記:応募総数激減の意味