
夕闇が差し込む放課後のオカルト研究会の部室。紫煙のようなお香の香りが漂うなか、ガシャン! と勢いよく扉が開いた。
「大変! 大変! みんな聞いて! ニコプチからニコラに、今年は末永ひなたちゃんや山腰理紗ちゃんたち、併せて6人も進級して来るんだって!」
きんぱつが、ニコラの最新号を片手に、部室に飛び込んで来た。
「はい。ただいまネットで確認いたしました。今年の進級は、間違いなく6人。これはニコラ史上、過去最多人数でございます」
まじかるは、水晶玉を磨きながら、驚くほど冷静に答えた。
そこに、ぽにてが加わり、誌面を覗き込む。
「でも、これってすごいことじゃない? 卒業したプチモちゃんたちのほとんどがニコラに来るなんて。うーん、やっぱり、ニコラとニコプチは合併する前提で動いてる、ってコトなのかな」
そう言うと、まじかるに視線を移す。
「たしかに、その通りでございます」
まじかるは立ち上がると、淀みない動作でホワイトボードに図を書き始める。

「ですが、合併自体はまだまだ先の話。それよりも、進級が6人となった影響が真っ先に出てくるのは、今年のニコラモデルオーディション。そう、私たち読者に直接関わる『選考の門』でございます」
「えっ!? どういうこと?」
きんぱつが首をかしげる。
「では、詳しく説明いたしましょう。ご存知の通り、星乃あんなさんたち新高2ニコモ、は来月号で卒業いたします。そこで彼女たちを除いた新体制、すなわち新高1以下の学年構成に注目してください。さて、各学年の人数は、それぞれ何人になりますか?」
「えっと・・・」
ぽにてが指を折って数え始める。
「新高1が松尾そのまちゃんたちだから9人。新中3は野澤しおりちゃんたちで6人。で、新中2は・・・もともと畠桜子ちゃんたち3人だけだったところに、今回、ニコプチから6人が加わったから・・・9人だ!」
「正解です」
まじかるが、ホワイトボードの数字を強く囲んだ。

「ん? ねぇ。やけに中3が少なくね?」
きんぱつが身を乗り出した。
これに我が意を得たりといった表情で、まじかる。
「左様でございます。中2と中3の人数が、この時点で逆転してしまったのです。そして、この歪みこそが、今年のオーディションに確実に影響を与えることになります」
まじかる、続けて。
「現状のニコラのオーディションにおいて、合格の可能性があるのは中1から中3の3学年。小学生は主にニコプチの管轄ですので、基本的には受かりません。現に、去年の松浦楓さん&今村茉愛さんのように、たとえ、ニコラとニコプチの両方でファイナリストに残ったとしても、最終的に後者に流れるのが通例です」
まじかるの瞳の奥が光る。
「問題は、中2と中3の比率です。例年でいうと、中2合格が1~2人、中3合格は0~1人というのが相場。中3はニコモとしてデビューしても、すぐに卒業を迎えることになり、どうしても活動期間が短くなるため、よほどの逸材でもない限り、合格は難しくなるのです」
ぽにてが溜息をつく。
「そっか。やっぱり、現実は厳しいんだね」
しかし、ここから話は思わぬ展開に向かう。
「ですが、今年は違います。 中3は現在6人しかおりません。他の学年と比べても圧倒的に少なく、明らかに補充が必要な人数です。つまり、今年のオーデでは確実に中3の合格者が出ると言えるのです」
「おぉ! チャンス到来じゃん!」
まじかる、立ち上がって。
「それだけではありません。中2は、今回の進級組を含めて、すでに9人に膨張しています。もしもこの状態で、さらに中2が何人も受かったなら、あっという間に二桁に乗ってしまう。編集部としては、中2の合格枠を0か1人に絞らざるを得ないでしょう」
ここでまじかる、交互に二人に視線を移しつつ、質問する。
「では、その余った枠は、どこへ行くと思いますか?」
カンのいい、ぽにてが即答する。
「あっ!? もしかして中3に回ってくる、ってこと!?」
まじかるが満足そうにうなずく。
「はい。その通りです。現状6人しかいない学年を補強するのは急務。今年に限っては、受かりづらいとされる中3の合格枠が拡大し、それこそ2人や3人まとめて受かっても何ら不思議ではないのです」
ぽにてがパッと表情を明るくした。
「わー! なるほど。となると、今年は中3のコにとっては最大のチャンスってわけだね。私としては、去年のファイナリストだった白川心々実ちゃんに、ぜひ頑張ってリベンジして欲しいな!」
まじかるは最後にお香を消し、静かに締めくくる。
「中3の人数不足、そして中2の飽和状態。二つの要因が重なり、今年のオーデは例年になく『年長者』に微笑むでしょう。……歴史が動く瞬間を見届けられるか。信じるか信じないかは、皆さん次第でございます」