
カチャカチャ、コンッ!
放課後のオカルト研究会の部室で、テーブルサッカーに興じる3人。
お香の煙が薄く漂う室内では、場違いなプラスチックの音が響いている。
「よっしゃ、ゴーーーーール!! ウチの勝ちー!」
きんぱつがガッツポーズを決めると、審判役を務める、ぽにてが得点盤をカチリと動かした。
「また負けてしまいました・・・」
まじかるが苦笑いしながら、キーパーの棒をクルクルと回す。
「勝負は時の運・・・。ですが、フィールドの上には、時として未来を予言する『予兆』が転がっているものでございます」
「ん、何それ? 怖い話?」
きんぱつが、興味なさそうに尋ねるが、その返答の前に、ぽにてが割り込んで。
「あ、そういえばさ、まじかる。フィールドと言えばJリーグ、Jリーグと言えば、ニコラと百年構想リーグのタイアップ。今年のニコプチ卒業生から、ニコラに進級するの、誰だと思う? 毎年この時期、気になって気になって」
まじかるは、テーブルの上のサッカーボールを一つ手に取り、それをじっと見つめる。
「実は、答えは既に提示されているのでございます。今回の『ニコラ・ニコプチ × Jリーグ』のプロモーション選抜メンバー。その人選こそが、未来の確定事項といえるのです」
「え、どういうこと?」
ぽにてが不思議そうに首をかしげると、まじかるはいつものようにホワイトボードへと歩み寄り、黒のマーカーを手に取った。
「では、説明いたしましょう。まず、期間に注目してください。今回、ニコモたちが応援メンバーとして参加する『Jリーグ100年構想リーグ』。その開催期間は、2026年2月から6月までとなっています。つまり、アンバサダーとしての契約期間も、6月までと考えることができます」
「なるほど。で、それが何か問題なん?」
「いえいえ、大問題でございます。ニコラ、ニコプチの歴史において、決して避けて通れぬ宿命。専属モデル『卒業』の時期を思い出してください。今年の場合、ニコプチは3月に、ニコラは4月に、それぞれ最高学年のモデルたちが卒業を迎えることになります」
まじかるは、ホワイトボードに大きく「卒業」と書き、そこにバツ印を付ける。

まじかる、続けて。
「さて、もしこのタイアップメンバーの中に、卒業を迎える最高学年、つまり、ニコラなら高1、ニコプチなら中1が入っていたら、どうなるでしょうか?」
「あーーーっ!」
きんぱつが、手にしたスマホをバシバシ叩いて叫ぶ。
「任期の途中で卒業しちゃうから、その時点で、ニコラやニコプチのモデルじゃなくなっちゃうんだ!」
「はい。その通りでございます。6月までの開催期間中に卒業を迎え、専属モデルとしての身分を失ってしまえば、もはや『応援団』としてのPR活動は継続できません。だからこそ、ニコラの参加メンバーは全員、稲垣来泉さんや松尾そのまさんたち、卒業まで余裕のある中学生から選ばれているのです」
ぽにてがハッとした表情になる。
「あっ! 星乃あんなちゃんや伊藤沙音ちゃんが選ばれなかったのって・・・彼女たちが高1で、もうすぐ卒業しちゃうからなんだ! ずっと不思議に思ってたんだ~」
まじかるは満足そうにほほ笑む。
「その通りです。ニコラ生徒会長&レピピアルマリオ・イージモデルというトップモデルでありながらアンナさんが、また、ニコモ歴最長のシャノンさんが、それぞれメンバーに入っていないのは、そのためでございます」
ここで、きんぱつが手を挙げる。
「ハイ! ハイ! 質問ー。じゃあさ、ニコプチは? ニコプチから選ばれた、末永ひなたちゃん、瑞島穂華ちゃん、安藤実桜ちゃんの三人は、全員が中1じゃん。来月発売の春号で卒業になっちゃうわけで、それだと、まじかるの話と矛盾すんじゃね?」
これに、まじかるは不敵な笑みを浮かべる。
「フフフ。さすがは、きんぱつさん。鋭いですね。実は、この点こそ、今年のニコラ進級を『予言』する上で、最大のポイントとなるのでございます」
自信満々のまじかるが、いったいどんなことを言い出すのか、興味津々といった感じの二人。
まじかる続けて。
「整理しましょう。現役のモデルとして、6月までの契約期間を全うできない者は、Jリーグ応援メンバーに選ばれる資格がない。だからこそ、ニコラでは高1が選ばれなかった。それなのに、ニコプチでは、来月卒業するはずの中1が、なぜか堂々と3人も選ばれている。・・・では、この矛盾を紐解く、唯一の方法とは?」
「も、もしかして!?」
きんぱつが息を呑む。
「そうです。答えはただ一つ。今回、ニコプチから選ばれた3人は、ニコラへの『進級』が確約されているのです。それならば、3月にニコプチを卒業しても、4月から、今度はニコラのモデルとして、6月までの任期を全うできる。こう考えると、すべての歯車が合致するのでございます」
きんぱつがバンバン机を叩いて興奮気味に言う。
「わー! マジかぁ! じゃあ、今年のニコラ進級メンバー、もう発表前に見えちゃったってことじゃん!」
まじかるは、手に持っていたサッカーボールをホワイトボードの「進級」という文字に、コツンと当てた。
そして、二人に向き直って。
「それでは、結論です。今年のニコラ進級者は、ヒナちゃんさん、ホノカさん、ミオさんの3名。これが、『Jリーグ百年構想リーグ』という特別な舞台が暗示する、抗えぬ未来の設計図といえるのです。信じるか信じないかは、皆さん次第でございます」