
夕闇に包まれたオカルト研究会の部室。
空気中には、お香の独特な香りが立ち込め、放課後の静寂を支配していた。
テーブルでは、ぽにてが発売されたばかりの『ニコラ3月号』の誌面をめくり、その横で、きんぱつがスマホを片手に公式サイト『ニコラネット』をチェックしてる。
「ねぇ、これ間違ってんじゃね? ウケるんだけど!」
きんぱつがスマホの画面を指差し、身を乗り出した。
「え、どれどれ?」
ぽにてが覗き込むと、今月号の注目記事を紹介するページに、堂々と《総勢28人の全ニコラモデル》という文字が躍っている。
まじかるは、水晶玉からスッと目を離すと、瞳の奥を鋭く光らせた。
「これはいけませんね。ニコラモデルは現在、27名でございます。1人多い・・・。これは明白な間違い、すなわち『誤植』でございます」
「マジか! 現役ニコモの人数を知らないとか、編集部バイブス低すぎっしょw」
きんぱつがゲラゲラ笑いながら画面をスクロールする。
「いや、待て、待て。 《7.バレンタイン企画》のところにも《ニコラモデル28人》って書いてあるぞ。これ、記事書いた人、ガチでニコモが28人いると思い込んでんじゃね?」
「本当だ・・・。一箇所だけならまだしも、ずっと間違ってるなんて」
ぽにてが呆れたようにため息をつくと、きんぱつがさらに別の箇所を指差した。
「てか、これ見てよ。最初、思わず見逃してたけど、そもそも記事のタイトルが《3月合併号》って書いてあんぞ?」
まじかるは、再び厳かに首を横に振る。
「またまた、いけませんね。ニコラにおいて『合併号』となるのは、1月号と2月号、さらには7月号と8月号の年に2回のみ。3月号は、独立して発売される単体の号でございます」
ぽにてが、不安そうにページをめくる手を止めた。
「マジそれな。ってか、これ絶対、大学生のバイトとかが適当に記事書いてんじゃね?」
きんぱつが、スマホを放り出してぶっきらぼうに言う。
「ニコラの知識も、ニコラへの愛も、1ミリも感じないんだけど。ウチら読者をナメすぎっしょ、マジあきれるわー」
「左様でございますね」
まじかるは、ゆっくりと目を閉じ、お香の煙を深く吸い込んだ。
「知識なき筆は誤りを生み、愛なき言葉は言霊を殺します。読者よりも雑誌を知らぬ者が作っているのだとすれば、それはもはや『ニコラ』という魂を失った、ただの紙の束にすぎません。かつての黄金時代を支えた熱量は、今や霧散してしまったのでしょうか」
そのまま、机の上の雑誌をパタンと閉じると、最後に不敵な笑みを浮かべる。
「文字が乱れ、愛が枯渇した時、そこに待つのは『崩壊』か、あるいは『転生』か。この誤植の山、さらには、それが何ら訂正 もされず、まる4日間*1も放置されている現状こそ、ニコラという伝統ある雑誌の歴史が終わりを告げる、抗えぬ不吉な予兆なのかもしれません」
⇒現在の《最新号注目記事10本》
*1:ニコラネットの《最新号注目記事10本》は、1月30日に投稿されましたが、2月2日の深夜時点で、訂正が確認できていません


