
お香の煙が複雑な模様を描きながら立ち上る、放課後のオカルト研の部室。
まじかるは、静かにタロットカードをひとまとめにすると、今度はホワイトボードの前に立ち、黒のマーカーを手に取った。
「さて。オーディションの形式(予言1)に、雑誌の発行形態(予言2)ときて、次はいよいよ『中身』、つまり合格者の属性に関する予言でございます」
まじかるの声のトーンが、一段階低くなる。
「予言その3。今年のニコラモデルオーディションでは、ハーフの女の子が合格します」
「え、マジで!?」
きんぱつが、スマホをいじっていた手を止めて顔を上げる。
「でも、オーデ出身のハーフちゃんって、ニコラだとあんま見なくない? どっちかっていうと『Seventeen』とかのイメージっしょ」
ぽにても、不思議そうに首をかしげる。
「確かに。ニコラのオーデって、ハーフの子が受かる印象、あんまりないよね。最近だと・・・、2023年の松尾そのまちゃんくらい? だからこそなんで今年、急に?」
この問いに、まじかるはフッと不敵な笑みを浮かべる。
「おっしゃる通り、ミスセブンティーンと違い、ニコモオーデにおけるハーフの合格者は、決して多くありません。しかし、ニコラの歴史の裏側には、ある《隠された法則》が存在しているのをご存知でしょうか?」
「法則?」
二人の声が重なる。
「名付けて、ハーフ合格=3年に1人の法則でございます」
ここでまじかるは、ホワイトボードにキュッキュッと文字を書き始めた。
「ちょっと、これをご覧ください。過去のオーデにおけるハーフ合格者の系譜です」

「2009年に池田エライザさんと藤田ニコルさんが、6年後の2015年には藤本リリーさんとオルトン花菜ベティさんがダブルで、さらにそこから6年後、2021年には川原美杏さんが単独で、それぞれグランプリを受賞したように、かつては『6年に一度』というペースでハーフの合格者が出ておりました。単純計算すれば、1人につき3年。これがニコラにおけるハーフ採用のバイオリズムだったのです」
「へぇー、言われてみれば確かに! でも、にこるんとエライザちゃんって、同期だったんだ~」
ぽにてが感心したように声を上げる。
しかし、きんぱつがホワイトボードの下の方を指差しました。
「ん? でも待って。最後の方、間隔バグってない? 2021年の次がそのまちゃんの2023年って、ここ、2年しか空いてないじゃん」
「ご明察。そこが重要なポイントでございます」
まじかるは、2023年の「松尾そのま」の名前に、赤丸を付けた。
「本来の『3年周期』であれば、次にハーフが合格するのは2024年のはずでした。しかし、皆さんもご存知の通り、そのまさんは加入前からインスタのフォロワーが10万人を超え、テレビでも活躍していた超大型新人。編集部としては、そんな逸材が応募してきた以上、周期を無視してでも合格させるしかなかった。つまり、歴史が『1年早まった』のです」
ぽにてが顎に手を当てて考え込みます。
「なるほどね。でもさ、『早まった分』も含めて、そのまちゃんから数えたら、3年後は来年の2027年になるはずじゃない? それが今年受かるっていう根拠は?」
まじかるは、マーカーを指揮棒のように振って。
「確かに、周期通りなら来年です。しかし、そのまさんが例外的に採用されたように、編集部として『良い素材がいれば、たとえ3年経っていなくても必ず採用する』という姿勢は変わりません。そもそも、毎年のように藤田ニコルさんや池田エライザさん、松尾そのまさん的な、それこそ将来の大物確定クラスが応募してくるとは限りません。だからこそ、少しでも光る原石がいれば、即座に確保に動くのです」
「あー、なんとなく分かってきたかも」
きんぱつが腕組みをして頷く。
「つまり、『3年待つ』ルールはもう崩壊してるってこと?」
「左様でございます。さらに決定的なのは、そのまさんが今や現役ニコラモデルの中でトップの知名度と人気を誇っているという事実です。これにより、編集部の方針も『ハーフは慎重に採用』から、『人気が出やすいハーフを積極的に採用』へと、転換したと考えられます」
まじかるは、ホワイトボードの余白に大きく「2026年 合格?」と書き殴った。
「よって、周期が崩れ、方針も変わった今、ある程度ニコラモデルにふさわしいハーフの子が応募してくれば、合格となる可能性は極めて高い。これが私の結論でございます」
「なるほどね。確かに、今やそのまちゃんの影響力は絶大だし、編集部が味をしめるのも分かる気がする」
ぽにてが深く納得したように呟いた。
きんぱつも、期待に目を輝かせて。
「マジか! じゃあ今年は、久しぶりに超絶美形ハーフの新モちゃんが拝めるかもってことね! それはそれでテンアゲなんだけど!」
まじかるは、満足げにゆっくりと二人の顔を見回した。
「少なくとも、ニコラ10月号でお披露目される今年のファイナリストには、必ず『カタカナ名』の女の子が数人、含まれてくるはずです」
そして、いつもの決め台詞を口にする。
「信じるか信じないかは、皆さん次第でございます」