
放課後の旧校舎の隅。オカルト研究会の部室の扉を開くと、そこはまるで別世界のような、濃密な空気に包まれていた。
テーブルを囲むのは、見た目も性格もバラバラな3人娘、きんぱつ、まじかる、ぽにて。
そう。いよいよ、まじかるによる大予言「今年ニコラで起こること」が始まる。
「それじゃあ早速、恒例のニコラ大予言2026、いってみよー!」
きんぱつが、キラキラのネイルを弾ませながら、まじかるを急かす。
「まじかる、出し惜しみナシで頼むわ! ウチら、マジで震えるようなネタ、求めてっから」
続けて、ぽにてが、すかさず釘を刺す。
「星乃あんなちゃんがミスセブンティーン2026に受かるとか、末永ひなたちゃんと山腰理紗ちゃんがニコラに進級するとか、そんな誰でも言い当てられるような、ありきたりの予想じゃだめだよ。もっとこう、『ニコラ』の歴史がひっくり返るようなやつ」
これに、まじかるは無言で頷くと、紫のローブを整え、水晶玉に手をかざした。
「その辺は分かっております。皆さんが、あっと驚くような予言を用意してまいりました」
そして一呼吸おくと、まじかるが厳かに告げる。
「予言その1。ニコラモデルオーディションとニコプチモデルオーディションが、ついに統一されます」
「えー! 嘘っ」
「マジか!?」
二人の声が重なる。
まじかるは淡々と、しかし説得力のある口調で続ける。
「第一に、皆さん、2025年の12月からニコプチの編集長が、ニコラの編集長も兼任するようになったのはご存知ですよね。トップが同一人物になったのです。合否を判断する最終的な決裁権者が同じなのに、オーディションを別々に分ける意味が果たしてあるでしょうか?」
「確かに・・・。言われてみれば、分けるメリット、マジでないかも」
きんぱつが頷くと、まじかるはさらに畳みかける。
「第二に、近年のニコモオーディションでは、小学生が全く受からなくなっています。特に過去3年間、小5はおろか、小6すらただの1人も受かっていない。受かるのはみんな中学生です。一方で姉妹誌ニコプチは、小4から小6をバランスよく採用している」
まじかる、ここで間を取って、2人を見渡す。
「さて、どうですか? ニコプチが小学生、ニコラが中学生。役割が明確に分かれているのに、わざわざ別々の窓口で募集し、それぞれの応募用紙すべてに目を通し、書類通過者には交通費を出して面接に呼び、さらには最終審査も個々に行う。これではあまりに非効率です。しかも今や、小学生は少しでも合格確率を上げるため、両方のオーデを受けるのが常識となっており、実際、去年は今村茉愛さんや松浦楓さんが、両方でファイナリストに残ってきました」
続けて。
「他方、もしこれを合同オーディションにすればどうでしょう。応募時の学年によって、小学生はニコプチが採用、中学生はニコラが採用と、自動的に振り分けるだけで済むのです。そこは、ニコラ本誌を買うと付いてくる応募用紙は中学生用の赤、プチは小学生用の青といったように色で区分けしてもいいかもしれません。ともかく、ただでさえ両誌ともに部数が減って、予算的にも厳しいのが現状。まさに、一石二鳥ではありませんか?」
ここで、ずっと黙っていた、ぽにてが呟くように口を開く。
「それ、あり得るかも」
きんぱつも、目を丸くして。
「ヤバッ、理屈がガチすぎて草w」
そしてまじかる、結論に入る。
「近い未来、ニコラとニコプチの垣根は必ず崩れます。この合同オーディションの開催こそが、将来的に両誌が完全に一つの雑誌として生まれ変わるための布石。2026年、私たちは歴史が動くその瞬間を、目の当たりにすることになるでしょう・・・」
その時、お香の煙が魔法陣の形に沿って渦を巻き、3人の瞳を妖しく照らし出した。
「信じるか信じないかは、皆さん次第でございます」
《第1章終わり》